イングランドのプレミアリーグは、2026/27シーズンからユニフォームのギャンブル広告を禁止することを発表しました。マッチデイのユニフォームの胸にあたる部分には多くの注目が集まりますが、そこにギャンブル広告が載ることが禁止されます。
この決定がプレミアリーグのクラブやファンにどのような影響を与えるのか、そしてなぜギャンブル広告を禁止にしたのかについて紐解いていきましょう。
英国のプレミアリーグに興味がありますか?
公式にテレビの大画面で試合を視聴できるサービスは、日本国内だと以下の2つに限られます。フットボールの試合は大画面で観てこそ、快適な視聴環境が実現できます。
上記のサービスを利用し、テレビで簡単に視聴するにはアプリが必要です。最新のテレビには標準で搭載されていますが、ない場合は「Fire TV Stick」や「Chromecast」を使用することで解決します。
なにが問題視されたのか
スポーツは老若男女問わず愛される娯楽ですが、その中でもプレミアリーグはイングランド人のほとんどが愛していると言っても過言ではないでしょう。そのような不特定多数の観客が毎週のように訪れるプレミアリーグの試合で、堂々と選手たちの胸にギャンブル広告があることは適切ではないと判断されました。
過去には酒やタバコ、ファストフードのスポンサーで問題があったのと同じように、賭博も感受性の高い人々にとって大きな害をもたらす恐れがあります。
イギリスのインディペンデント紙はプレミアリーグを次のように揶揄しています。
There are times when a Premier League match can look like an advertising channel for the gambling industry.
プレミアリーグの試合は、ギャンブル産業の宣伝チャンネルのように見えることがある。
自主的に排除
プレミアリーグの全20クラブのうち、全部となる20クラブがマッチデイのユニフォームからギャンブルのスポンサーを自主的に外すことを決議しました。ギャンブル広告を自ら排除する動きはイギリス国内のプロスポーツでは初めてです。
一方でイギリス周辺国のスペインとイタリアでは、すでに同様の措置が政府主導で行われています。そのため、ラリーガとセリエAの選手たちの胸にギャンブル広告を見ることはありません。
ギャンブル広告脱却は完全ではない
プレミアリーグはギャンブル広告から脱却し、いよいよ健全なスポンサーのみが残るというわけではありません。ギャンブル広告が禁止されるのはマッチデイユニフォームの前面部分のみで、ユニフォームの袖やトレーニングジャージ、スタジアムの広告には規制がありません。
また、20のプレミアリーグクラブが自主的に胸のギャンブルスポンサーを取り除いたとはいえ、2026/27シーズンになるまではギャンブル広告が主役のユニフォームを作り続けられることが示唆されています。いま、プレミアリーグの20クラブは自主禁止措置にどれだけ誠実にいられるか疑問視されています。
決定が与える影響
2022/23シーズンまで、プレミアリーグには複数のクラブが胸にギャンブル広告を掲げていましたが、影響はリーグ全体でそれほど大きくありません。
例えば、2022/23シーズンにベッティング会社とマッチデイユニフォームのスポンサー契約を行っているのは8つのクラブですが、そのほとんどはリーグ下位に沈んでいるクラブが占めています。ベッティング会社との契約は一般的に年間£4mから£6m程度の価値がありますが、俗にビッグ6と言われる資金を豊富に持つクラブの「数千万ポンド」に比べれば見劣りします。
また、その8つのクラブがギャンブル広告ではない収益性の低いスポンサーしか獲得できなかったとしても、テレビ放映の収入という大きな柱が残っています。これは、ギャンブル広告の撤退によってクラブの財政難を引き起こす可能性は低いことを意味します。
プレミアリーグのベッティング会社
Bournemouth | Dafabet | 2024まで |
Brentford | Hollywoodbets | 2023まで |
Everton | Stake.com | 長期間 |
Fulham | W88 | 2023まで |
Leeds United | SBOTOP | 複数年 |
Newcastle United | Fun88 | 2023まで |
Southampton | Sportsbet.io | 2024まで |
West Ham United | Betway | 2025まで |
どうやって代わりを見つけるか
一部のクラブはすでにギャンブル広告から撤退しています。Newcatsleは2023/24シーズンから「Sela」というサウジアラビアのエンターテイメント会社が胸スポンサーとなり、イングランド2部に降格したSouthamptonは「Starling Bank」を新たに迎えています。
とはいえ、ビッグ6以外は歴史的にベッティングスポンサー以外で気前の良いスポンサーを見つけるのに苦労してきた過去があります。Newcatsleの例は同クラブがサウジアラビア政府と密接な関係にあるからこそ生まれた、コネスポンサーに過ぎません。
世界的なブランドを視野に?
Formula 1ではクリプトスポンサーが定着しつつありますが、プレミアリーグは対照的です。勢いがあったクリプト業界も最近では落ち着きを見せているため、今後クリプト企業が次々とプレミアリーグのスポンサーに参入する可能性は低いでしょう。
クリプトがダメなら何をスポンサーに迎えるべきか。ここは何かの業界に固執することなく、世界的なブランドを迎え入れて健全かつ収益が期待できる方向に向かうべきです。プレミアリーグは世界中から注目が集まる世界有数のフットボールリーグで、胸スポンサーの商業的価値は未だに過小評価されています。
プレミアリーグのクラブの胸スポンサーに秘められたポテンシャルをどれだけ引き出し、いかに世界的なブランドに魅力的に思わせるかが今後の焦点となりそうです。