世界を代表する都市のひとつとして知られるLondonはテムズ川を中心に発展しています。およそ2000年前から国際貿易の重要な場所となり、産業革命の時代には酷く汚染されていました。テムズ川には多くの橋を作るのに十分な歴史と需要があるのにも関わらず、East Londonに目を向けると極端に橋が少ないことに気づくはずです。
古くから観光客を魅了してきたTower Bridgeが良い指標になります。この橋の西側にはWaterlooと呼ばれる賑やかな地区があり、乗り物や徒歩で移動する市民や観光客のために数多くの橋がテムズ川に架けられています。一方で東側はいくつかの橋を見つけることができますが、まるで呪いがあるかのように橋同士の距離が長いです。
実を言うとEast Londonの呪いについては詳しく知りませんが、なぜ南北を分断したままにしているのかについては説明することができます。Londonの都市規模と経済の影響は大きく、市民の不満が募ればすぐに橋を作ることもできたはずです。ではEast Londonに橋を作るのにどのような障害があるのか見てみましょう。
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物理的な制約
テムズ川はLondonの中心部から東に離れるほど川の幅が増していきます。河口はオランダがある方角を向いているため当然のことです。Tower Bridgeではテムズ川の幅が250mであるのに対し、Dartford付近では570mまで拡張します。これでは橋の建設費と工事期間が西側と比べて2倍かそれ以上に膨れ上がってしまいます。
さらにもう一つ考慮すべき問題があります。それは橋の高さです。テムズ川は民間航空機が普及した今でも大型の旅客船が通る定期航路になっているため、そのような船が通れる高さの橋が必要です。これが意味するのは川の幅がそれほど広くなくても、必要以上に高さのある橋を建設しなくてはならないということです。盛り土や高架道路の費用を気にするなら、できるだけEast Londonには橋を架けたくないのが都市エンジニアの本音でしょう。
船との干渉を避けるためにトンネルを建設するのは良い考えではありません。地理的な制約があるからです。テムズ川は河口に近づくにつれて川の下の土が柔らかくなり、トンネルの建設が困難になります。そのためテムズ川の水が溢れてくることを恐れながらトンネルを建設するよりも、多額の建設費から目を逸らして橋を建設したほうがより保証された選択肢になります。
とはいえEast Londonにはすでに3つのトンネルが用意されており、現代のトンネル工学なら柔らかい土にも対応できることを証明しています。つまりEast Londonに橋とトンネルが少ないのはUKが世界で最も勢いがあった時代に十分な建築技術がなかったからでしょうか?結論づけるのはまだ早いです。
Tubeを利用しよう
実はTower Bridgeの東側には3つのTubeライン (Windrush, Jubilee, Elizabeth) があります。特に “Jubilee Line” はビジネス街のCanary Wharfと “The O2” があるGreenwichを経由して3回もテムズ川を渡っているため、人々がEast Londonの南北を簡単に移動するのに大きく貢献しています。
Londonは1863年に世界で初めてTubeを開業した都市であることを忘れてはなりません。市民はいち早くTubeを日常生活の移動手段として取り入れ、親しみを持っています。Londonに住んでいながらそれを利用しないなんて、Athensを観光してAcropolisを訪れずに帰るようなものです。いつものように優れた比喩が見つかりません。
人々は快適な方法を選ぶ
多くの市民がTubeを利用すれば、駅と電車が人で溢れかえることを除いて交通渋滞に悩むことはありません。East Londonに橋が少ないのは車やバイクの代わりにTubeを利用してほしいからでしょう。もし橋が増えると市民は個人のスペースを確保できる車やバイクを利用するようになり、橋の周辺は交通渋滞の問題が起こる可能性があります。これはWest Londonですでに起こっていることです。
私も典型的なアメリカ人のように車やバイクで移動することが好きです。公共交通機関が嫌いなわけではありませんが、前者で移動するほうが快適で私の環境では時間の節約にもなります。これは人間の性質上、仕方のないことです。車を運転するのに十分な収入があるのに、我慢してバスや電車で通勤する必要はありません。
ただし現在のEast Londonの状況では政治家や都市エンジニアの思惑に従ってTubeを利用したほうが費用に見合う効果を得ることができます。橋が少ない上にLondonは渋滞が酷いためTubeの方が早く目的地に到着する可能性が高いのです。また、通勤時間のほとんどをアイドリング状態の車内で過ごすより安く済むはずです。